名前のない家事、見えない家事こそ家族で分担を。
名もなき家事、名前のない家事、見えない家事と呼ばれる、料理・洗濯・掃除以外の、名前がつかないちょっとした家事があります。
例えば、次のようなことは家の中で誰が行っていますか?
- トイレットペーパーやティッシュペーパー、シャンプー、洗剤等の消耗品の交換や補充。
- リモコンや時計の電池交換、電球交換。
- 洗濯に関するいろいろ。色物を分けたり、裏返したり、ネットに入れたり。干して取り込んで、たたんで、しまうまでの作業。洗濯槽の掃除。
- ゴミ出しの際の分別。ペットボトルやビン・カンを洗ったり、新聞や雑誌をまとめる作業。
- 玄関にある靴を揃えたり、靴箱にしまうこと。
- 栄養バランスや家族の予定を考慮して日々の献立を立てること。
キリがありませんが、これらが名前のない家事です。
誰かが必ずやらなくてはならないことのため、普段家事の担当が多い人が気付いたらやっている、ということになりがちです。ですが、今の時代これらを一人で担うには限界があります。
掃除と片付けのプロとして働く竹内政子先生も、そんな名前のない家事に頭を悩ませてきました。
「『名もなき家事』を全て解消するのはとても難しいです!」と竹内先生は言います。
結婚後専業主婦になった竹内先生は、この仕事を始める時に、家事を今まで通り手を抜かずにすることが条件だったそうです。かなりの難題です。
そこで、“手抜き”ではなく、“頑張りすぎない家事”、“手をかけない家事”の方法を考えました。
今では成長したお子さんたちが積極的に家事を手伝ってくれるようになり、家事や心の“余裕貯金”が増え、家族に優しく接することができるようになっているそうです。
竹内先生が改善されてきた家事の数々をご紹介します。参考にしてみてください。
名もなき家事・見えない家事のプロの解決方法。
竹内先生は「家事をしない人は相手がしてくれた家事になかなか気付いてくれません。家族が快適に暮らせているということは、普段から評価されない“見えない家事”をしっかりとしてくれている誰かがいるということ。その事に気付いてほしいですよね」と言います。
解決方法として、竹内先生は1人で頑張るのをやめ、協力してくれるように家族に積極的に働きかけました。
①洗濯の手間を減らすための工夫。
洗濯で避けたいのが洗い残しです。
一度の洗濯でちゃんと汚れを落とすために、前もって家族にお願いの声かけをするようにしました。
「汚れている面が表に来るようにして出してね」
「泥汚れのような頑固な汚れやシミになってしまいそうな汚れがある時は事前に声をかけてね」
予洗いを含めて洗濯自体は竹内先生が行いますが、その手前まではそれぞれにやってもらっています。
何度何度も繰り返し伝えたことで、徐々に習慣化され、協力を得られるようになりました。
洗濯と言えば、家族全員が毎日使うタオルは毎回結構な量になります。
そこで、タオルを使う場所・使う人で分け、気付いた人にたたんでしまってもらえる工夫をしました。
トイレやキッチンのような共有スペースのタオルは、文字やアップリケで使用場所がわかる物にしました。
家族の誰もが、たたんだ後に迷わずに使う場所まで持っていき、しまえるようになっています。
家族個人のタオルはそれぞれの好みの色を用意。
各々が自分の分をしまったり出したりして使っています。
タオルを個人で使い分けることは感染症対策にもなるので二重の意味でおすすめです、と竹内先生は言います。
②ゴミ出しをラクにする工夫。
ゴミ出しには様々な工程があります。
それらを簡素化するために、まずメインのゴミ箱を台所に集めました。
それぞれにゴミの分別方法や回収日をラベリングで見える化。
家族が自分で判断して捨てられるようにしました。
これで捨てる場所や捨て方を聞かれることが減り、ゴミ出し前の仕分け直し等が発生しなくなりました。
家族もゴミを捨てるという家事に意識が向くようになり、竹内先生がまとめたゴミを自発的に出してくれるなど、協力的になったそうです。
ゴミ出しをラクにするために、ゴミ袋の交換時にも工夫をしています。
可燃ごみのゴミ箱には、最初に一般的なビニール袋をセットし、底にキッチンペーパーを敷いて、万が一ゴミ袋が破れた時でもゴミ箱が汚れにくいようにしてあります。
その上に普通の可燃ごみ用の袋をかけます。
この時も底にキッチンペーパーを入れ、出てしまった水分を吸収させるようにします。
竹ぐしや爪楊枝のような鋭利な物は中からゴミ袋を破らないよう、チラシ等で包んでから捨てるように家族にお願いしています。そのためのチラシもごみ箱近くに置く徹底ぶりです。
洗面所等にある小さいゴミ箱には、ゴミ袋の交換の手間を省くために透明のビニール袋を複数枚重ねてセットしています。
下から3枚目にイラスト付きの袋をセットしておき、その袋が出たら新しい袋をまとめてかける合図にしています。
読み終わった新聞や雑誌、段ボール、牛乳パック等は読んだ人や使った人が責任をもって収集場所まで出しに行くシステムに。
夫だけが読む新聞も、自分で束ねて出すように声を掛け続け、時間をかけて協力してもらえるようになったそうです。
その他の物は置き場が決めてあり、回収日が近くなると竹内先生が家族に声を掛けて集め、束ねていきます。
収集場所に出すのはお子さんの仕事。
随時「重いから助かるよ」と感謝を伝えるようにしています。
これからの時代は、Web版や電子書籍に変更してゴミそのものを減らすのも一つの方法だと竹内先生は考えます。
③消耗品の補充に関する工夫。
家族で共有しているシャンプーやリンス、ボディソープは、残量が見えるボトルに詰め替えて使っています。
補充は主に竹内先生が行うため、ご自分が運用しやすいよう目安の白と黒のラインを付けました。
白いラインは「そろそろ補充の準備をしましょう。ストックが無ければ購入しましょう」というサイン。
黒いラインは「1回分の詰め替えパックなら、ここより減ったら全部入れてもあふれないので、いつでも補充していいですよ」というサイン。
残量の目測を誤って補充時にあふれてしまうと面倒なので、その予防まで考えられています。
家族が多かったり頻度の高い消耗品は大きなボトルにして詰め替えの頻度を減らしたり、詰め替え用のパックに直接ポンプを付ける商品を使用するなど、家庭に合わせてストレスが減る方法を検討してみてましょう。
その他の日々の消耗品として、箱ティッシュは枚数が多い物、トイレットペーパーは巻きが多い物を選び、取り替えの頻度を減らしています。ストックも省スペースになり、一石二鳥です。
洗濯機の洗剤や柔軟剤など、主に竹内先生が日常の家事で使う洗剤類は、月に二度補充日を決め(現在は1日と15日)、残量をチェック。必要に応じて補充します。
ゴミ袋はティッシュのように引き出せるタイプ(写真左)をセレクトし、一般的なタイプ(写真右)でよく起きる、出す度に多く出しすぎたり出した後がぐしゃっとなって直す手間を減らしています。
使う時のストレスを減らすこと、ストレスフリーのアイテムを選ぶことも、家事をラクにするコツです。
名前のある家事にもひと工夫。
ごはん作りをラクにする工夫。
竹内家では朝夕2回ご飯を炊いているので、無洗米を選んで毎回お米を研ぐ手間をカット。
残ったご飯を冷凍する時は大(200~250gの丼用)・中(1膳分)・小の3種類に分け、ちょっと食べ足りないと感じる時や、休日の食事時等、食べたい量をそれぞれが選べるようにしてあります。
掃除をラクにするための工夫。
キッチンや浴室、洗面所等の汚れやすい場所にマスキングテープを貼り、掃除を最小限にしています。
浴室では窓のパッキンのようなカビが発生しやすい場所にマスキングテープ(写真の白い物)を貼り、汚れたら張り替え、カビを予防。掃除の手間を省きます。
今回は見やすいように白いテープを使っていただきましたが、通常は左の窓のように黒いテープで目立たなういようにしています。
このほか、洗面所ではねた水がたまりやすい壁際、キッチンの油汚れが気になる場所でも活用しています。
汚れ防止のマスキングテープには抗菌作用のある物、色が目立たない物等、幅広く市販されているので、楽しみながら使い分けています。
洗面所の掃除で手間なのが鏡の掃除。
歯磨き粉等で汚れやすく、時間が経つと落としにくくなるので、ミニタオルを置いて汚れに気付いたらその都度拭くようにしています。
掃除道具が近くにあると汚れに気付いた人がすぐに掃除ができ、汚れも早く簡単に落とせます。
家事を家族で分担する、掃除のプロのコツ。
竹内先生の家事をラクにするコツ、参考になる点があったと思います。
先生は自分ひとりが頑張りすぎるのではなく、家族や周りの人に少しずつお願いして頼ることを意識してきました。
自分の予定や用事がある時は「帰るまでに○○までやっておいてもらえるととても嬉しい、とても助かる」等と伝えています。
小さな頃から伝えてきたお子さんたちは、そのおかげか家事に抵抗がないように感じるそう。
もちろん、大人にも諦めずに伝え続けることで変化が出ているそうです。
何よりも大切にしているのは、手伝ってくれた時には褒め、感謝の気持ちを言葉にして伝えること。
家族の性格に合わせ、ちょっと大げさに褒めたり、他の家族と一緒に褒めたり。
「ありがとう」を声に出したり文字にしたりして、たくさん伝えます。
この効果で家族が自発的に家事に取り組んでくれるようになったので、これも家事をうまくこなす大事なコツです。
家族で助け合って、心にゆとりのある暮らしやすい毎日を作っていけるといいですね。