家族全員が片付ける人になるための片付けの仕組み。
「家族が決めた場所に物を片付けてくれない」
「いつも私ばっかり片付けている」
時々、そんな嘆きを聞きます。
自分ひとりが家中の片付けをしていては疲れてしまいますよね。
そこで今回は、家族全員が自分の物に責任を持って自発的に片付ける人になるための片付けの方法、片付けの仕組みを考えます。
片付けのプロ、大津たまみ先生に教わりましょう。
「ホームマネージメントシステム」という考え方。
片付けても片付けても、すぐに元の散らかった状態になってしまう。
そこから抜け出すために大津先生が提唱するのが「ホームマネージメントシステム」という方法です。
家事は家族全員が担当した上で、家族の誰かがマネージャーになり、家をマネージメント(管理)するという考え方です。
片付けの現場経験から、マネージャー役は女性やお母さんが担うことが多いと大津先生は感じていますが、自分だけ、もしくは全員で片付けだけをするのではなく、誰かマネージャーになることでうまく家事を回し、結果として家事を分担してラクになると考えます。
そのためにすることを5つのステップで紹介していきます。
①家の間取りを書く。
まずは、家の間取りを描いてみましょう。
一見無関係のようですが、間取りと片付けには大きな関係があるそうです。
「自分の家によくわからない空間はありませんか?知らないうちに物置になってしまっている空間は?
意識せずにもったいない部屋や空間ができている場合があります。
間取り図を描いて家の中を俯瞰することで、どの部屋で誰が何をしているのか、部屋の役割が明確になります。」
例えば、リビングには家族全員が集まります。
ここは団らんをする場所。
話をしたり、TVを見たり、本を読んだり、子どもがいたらゲームをしたり。
キッチンはごはんを作る場所ですし、ダイニングは家族でごはんを食べたり、お茶をする場所です。
大津先生は言います。
「行動の出口に物があります。
物は単独では動きません。行動することで物が移動し、その後に物が残ります。
家の中での行動を整理すると、物の整理、家の中の整理ができるようになります。
『この部屋でこれをするから、ここにこれが必要』という具合に、行動が明確になれば、物をどの部屋に置くかが決まってきます。
その行動で使う物をその部屋、その場所に収納するようにすれば物の管理がしやすくなり、片付けもしやすくなります。」
間取り図を描くことで、そんなことが見えてくるのです。
②ゾーン分けをして、責任を分担する。
次に、家族のメンバーが物の管理を担当する部屋や場所を決めます。
そこで過ごす時間が長い人に片付けを担当したり、管理者になってもらいましょう。
例えば、キッチンを一番よく使うのがお母さんなら、お母さんが片付けも管理も担当する 。
リビングの新聞を読むエリアは一番長くいるお父さんが片付けと管理をして、チェックはお母さんがする、というようにです。
それぞれが責任をもって定期的に片付けることで、全体の負担が軽くなり、効率化されます。
自分の物がある場所は自分で管理するようにします。
これで、誰か1人だけが片付けをしなくても良くなります。
すぐに結果を求めない。
そうは言っても、このシステムがうまく稼働するようになるには時間がかかります。
大津先生はエールを送ります。
「片付けを習慣化するには3つの心構えが必要です。待つこと・信じること・続けることです。
最初から完璧になんてできません。
つまずくのは、決めたことをやらなくなってしまい、それが日常化して元に戻ってしまうからです。
家族のペースを大切にしながら待つこと、やり続けられると信じること。
そして最後に、何があっても続けること。これが大事です。」
自分が片付けた方が早いと思うことが何度もあるかと思いますが、そこはマネージャーとして飲み込み、伝えて、続けることが肝心です。
これが機能するようになれば、家事は分担され、将来的に自分も家族もラクになります。
その日を信じて、頑張ってみましょう。
③実際に片付ける。
家族の分担が決まったら、実際に片付けていきます。
リビングで使う掃除道具入れの片付けを例にご紹介します。
収納場所に入っていた掃除道具を一旦全部取り出します。
リビングの掃除に必要な物と数を決めて、それ以外は別の場所で使ったり、ストック等に回します。
ここにはハンディワイパーが複数入っていますが、用途別に必要な物を1本だけ選びます。ほかの掃除道具も、毎日のリビング掃除で本当に使っている物だけを厳選します。
整理したら、収納場所に戻していきます。
一つずつに入れる場所を決めましょう。
場所が決まっていれば、使用後は空いている場所に戻すだけなので、迷わずに戻せて散らかりにくくなります。
収納場所には、何が入っているか一目でわかるようにラベリングをします。
自分以外の家族にも物の場所がわかりやすくなるので、大事な工程です。
リビングのような共有スペースに個人の物を置く場合は、人毎に収納場所を作り、ラベリングをします。
その個人が収納スペースの管理者となって片付けを行うようにします。
小さなお子さんがいる家庭では、お子さんのお気に入りのボックスを片付けのボックスにするのも良いでしょう。
④「使ったら元の場所に戻す」を徹底する。
片付いた状態をキープするためには「使い終わったら元の位置に戻す」をルール化して、家族で守るようにしましょう。
ルール化して何度も繰り返すことで、体が覚えて自然にできるようになります。
その際、シールや写真でラベリングがしてあれば、戻す場所がわかりやすく、片付けがスムーズになります。
⑤「3定(さんてい)のルール」を守る。
片付けをリバウンドさせないために大津先生が取り入れているのが「3定(さんてい)のルール」。
企業でも取り入れられている5Sの考え方に含まれています。
3定とは「定位置」「定量」「定管理」の3つの「定」。
物の位置、量を決め、定期的に管理をするようにすることです。
片付けをシステム化することで、キレイな状態をキープすることができるようになるそうです。
「定位置」とは
定位置とは定まった位置のこと。物を家の中のどこに置くのか、物の場所を決めます。
使ったら必ずそこに戻すようにします。
「定量」とは
定量は一定の量。物をいくつ持つのか、その量を決めます。それ以上になったら整理して、量を越えないようにします。
例えば、先ほどのリビングの掃除道具入れには、いつのまにか掃除道具が増えてあふれそうになっていることがよくあります。
それが定量を越えたということ。
全部取り出し、整理をして定量に戻しましょう。
定管理とは
定期的にチェックをして、その場所が片付いた状態をキープできているか、管理をします。
方法はいくつかありますが、その場所は誰が片付けの担当で、誰が管理しているのかを明確にし、リストを作ってチェックをするとラクです。
月に1回くらいを目安に行うのが理想的です。
大津先生自身も定期的にチェックをされていますが、特に年に2回、7月20日と12月10日は必ずチェックすると決めているそうです。
その理由は、日本では盆と正月は家に人が集まる機会が多いため、その前に余裕をもって片付けや掃除ができるように、とのこと。
また、子育てをされていた頃はこれに加えて3月20日にも見直しをされていたそう。
3月は子どもが進級前の片付けをし、勉強に集中できる環境作りをしやすいように、7月は子どもが夏休みで持ち帰ってくる学校の物を片付けるための場所を作るためだったそうです。
このほかにも、日常の小さな定管理として、その場所を離れる時には出ている物、使った物を元の位置に戻すことをルールにするという方法もあります。
大津家では、出かける前に物を必ず元の位置に戻すことをルール化し、片付いた状態で出かけるようにしているそうです。
そうすれば、帰宅した時に気持ちよく「ただいま」と言えるからです。
いかがでしょうか。自分が守りやすいルールを決めてみましょう。
まずは取り組むところから始めませんか。
片付けられるようになる仕組みの作り方、参考にできる部分があったと思います。
繰り返しになりますが、すぐに、一度で完璧にできるようにはなりません。
大津先生が言うように、「待って、信じて、続ける」。
根気がいりますが、長い目で見て、まずは始めてみましょう。
これを実践する時に欠かせないのが、家族との話し合いです。
始めてもうまくいかない時は、片付けがしにくい理由があるかもしれません。どうしたら片付けやすくなるのか、話を聞きながら家族にとってベストな方法を探してみてください。
毎回できなくてもいい。
諦めずに、とにかく続けることを目標に、進めていきましょう。