居場所がない物たち、ありませんか。
家の中に、どこに片付けたらいいかわからない物はありませんか?
片付けてもすぐに出しっぱなしになってしまう物や、自分は片付けても家族は片付けてくれない物。
そういう物があると、リビングやダイニングが雑然とした印象になってしまいます。
今回はこの片付かない物問題を、片付けのプロの櫛田佳子(くしだ よしこ)先生と解決していきます。
物には必ず収納場所を。
「片付かない物が生まれるのは、自分の持ち物を把握しきれておらず、すべての物に適切な収納場所が作れていないからです」と鋭い指摘をする櫛田先生。
ドキッとされた方は多いかもしれません。
収納場所を作る時は、戻しやすさを考えると片付けやすくなります。
適切な収納場所がないと片付かないのはもちろんですが、収納場所があっても、そこが戻しにくかったり、すでに物がいっぱいで戻しにくければ、物が出しっぱなしになったり、適当な場所に片付けてしまって使う度に探したり、二重買いに繋がってしまうからです。
つまり、すべての物を戻しやすい収納にすれば、片付かない物はなくなる、ということになります。
そのためには、「何を」「どこに」「どれだけ」収納するのかを明確に決めた収納にすること、と櫛田先生は言います。
物をカテゴリーごとに分け、使用頻度を考えて定位置を決め、適切な量で収納していきます。
これができれば、家の中がすっきりと片付きますし、探し物をする時間も減ります。
物の在庫管理もできるので、無駄な出費も減ります。
さらに家族で収納場所が共有できれば、自発的に片付けられるようにもなるので、家族間で生じるストレスも少なくなります。
櫛田先生のご自宅のリビングの収納棚を例に、戻しやすくなる収納の方法の作り方を8つのステップで紹介します。
ステップ① 部屋の使い方、役割を決める。
片付け中に見落とされがちな、重要な点があります。
それは、「何を」「どこに」「どれだけ」収納するかの、「どこに」を先に決めることだと櫛田先生は言います。
つい「何を」から始めたくなりますが、片付ける場所を先に決めることで、戻しやすい収納が作れるのだそうです。
そのためにまず、家の中の部屋をどう使うか、どんな部屋にしたいのか、理想の部屋のイメージを明確にします。
例えば「リビングはTVを見たり、読書をして団らんをする場所」、「和室は趣味の裁縫を楽しむ場所」、「キッチンは家族で料理をする場所」等です。
これが決まると、その部屋にあるべき物が自然に決まってきます。
実は、片付けられない物は間違った目的の部屋にあることも多いのです。
片付けの途中でその部屋にそぐわない物が出てきたら、属する部屋に移動させましょう。
リビングで趣味の物が出てきたら和室へ。個人が部屋で使う物が出てきたたら個人の部屋へ。
これだけでも、片付けがラクになります。
また、家の中でなぜか物置のようになってしまう部屋や場所もなくなります。
ステップ② 収納場所を決める。
部屋のイメージが決まったら、その部屋の「どこに」「何を」収納するのかを決めます。
ポイントは行動動線と、収納場所(家具等)の位置関係を考えること。
櫛田家のリビングの収納棚には、家族がリビングやリビング周辺で使う物を入れると決めています。
文房具、家族分のマスク、紙袋、衛生用品、薬、乾電池、工具、荷造り用の紐類、裁縫道具等です。
入れる物のルールができているので、物が増えた時も収納場所を作りやすく、戻しやすい収納にできます。
あらかじめ物の場所が決めてあれば、収納スペースにとりあえず放り込んだ結果に生まれる、グチャグチャで使いづらい収納も防げます。
行動動線という視点でご紹介したいのが、櫛田先生の文房具の収納方法。
リビングで使うことが多い文房具は、持ち運びができるボックスに入れて収納棚に置き、使う時はテーブルに出して作業、使い終わったらボックスごと棚に戻します。
リビングに文房具が出しっぱなしにならず、スッキリした部屋になります。
ステップ③ 片付ける場所の物をすべて取り出す。
収納場所と収納する物が決まったら、作業の計画を立て、実行していきます。
片付ける時は収納場所に入っている物をすべて取り出すのが鉄則です。
ステップ④ 「いる」「いらない」「迷い」「移動」の4つに分類する。
取り出した物は、4分割シートを使って分類します。
市販のレジャーシートを「いる」「いらない」「迷い」「移動」に4つに分け、当てはまる場所に物を置いて整理する方法です。
「いる」は今使っている物、将来使うことが明確な物です。
「いらない」は今使っていない物、将来も使うことがない物。
いるかいらないか8秒以上迷った物は「迷い」へ。
迷った物はまとめて「迷い箱」や「迷い袋」に入れ、いる物から離して保管します。半年後に見直して「いる」「いらない」を判断。時間を置くことで冷静な判断ができるようになります。
「移動」は、必要だけど収納場所が違っている物、別の場所で使ったり保管する物です。正しい場所に移動させ、そこで収納しましょう。
使っていないけど残しておきたい「思い出の品」も「移動」に置きます。「思い出箱」を作ってそこに納め、別の場所で保管しましょう。
詳しくはこちらのコラムも参照ください。
ステップ⑤ いる物を細かく分ける。
「いる」に残った物を細かく分けていきます。
文房具であれば、書く物、貼る物、切る物のように役割別にし、さらに書く物の中でも、鉛筆、ボールペン、蛍光ペンと細分化します。
分類ができたら、引き出し等に収納します。
収納の例として、ステップ②で登場した文房具ボックスをご紹介します。
ここには、使用頻度が高く、一番使いやすい文房具を厳選して入れてあります。
物ひとつずつに場所が作ってあるので、使う時は迷わずに取り出せて、使用後は空いている場所に戻すだけ。
片付けが自然にできて、ラクになるのです。
行き場がなくてその辺に転がっている消しゴムに困ることも、使う前に毎回ハサミを探すこともありません。
ボックスにあるのはよく使う文房具ですが、それ以外の物はストックとして別の場所に収納し、切れる度に補充して使っています。
櫛田家のリビングの収納棚にある、その他の物たちも一部ご紹介します。
紙袋は再利用が目的なので、使いやすいように大・中・小とサイズごとに分けてあり、工具類は何についていた部品なのかがわかるように分類しています。
リビングで個人が使う物が片付かない状態であれば、収納場所に個人用の収納場所を作っておくと、片付けやすくなるそうです。
ステップ⑥ 使用頻度を考えて収納する。
カテゴリーごとに収納した物を収納場所に納めていきます。
この時のポイントは、使用頻度順に、取り出しやすく戻しやすい位置に収納していくことです。
取り出しやすく戻しやすい位置とは、人がまっすぐに立った状態で、自分の目線より10cmほど上から、手をまっすぐに下ろして手首を曲げた場所までのこと。
今回の棚では矢印の位置にあたります。
ステップ⑦ 表示(ラベリング)をする。
収納場所が決まったら、表示(ラベリング)をします。
片付けた直後は覚えていても、時間が経てば忘れてしまいがちです。
家族で共有するなら尚更、ひと目で何が入っているかわかるように表示が必要です。
できるだけカテゴリーに忠実に「書く・消す」「切る・貼る」のようにすると、迷わずに戻せるようになります。
ステップ⑧ 見直す。
以上で一旦片付けが完了しましたが、忘れてはいけないのはこの後。
片付けには定期的な見直しが必要です。
例えば、紙袋。
片付け直後はラベリングされ、サイズ別にきれいに収納されています。
ただ、時間が経つとここに入れる紙袋が増え、気付いたらパンパンになっていたり、無理にギュウギュウ押し込んだりして、使いづらくなりがちです。
それでは片付けた意味がなくなってしまいます。
保存する紙袋はここに入る分だけ、と決め、入らなくなったら全部取り出して整理し、使う物を残して処分したり他の使い方をするようにしましょう。
この見直しをすることで、戻しやすく使いやすい収納が維持できます。物の管理もしやすくなるので、欠かさず、定期的に行いましょう。
紙袋に限らず、片付けた後に元の収納場所に戻らない物が出てきたら、原因を考えて収納を見直し、戻しやすい位置を探してみてください。
家族と家に合った収納方法を探しませんか。
最初から片付けのプロのようにはできませんし、家庭や住環境によっても収納方法は変わります。
片付けの基本や手順は変わりませんので、まずはできる範囲で始めてみませんか。
また、この方法は家族と話し合いながら行うことも大切。
自分は片付けられるのに家族が片付けてくれないとお困りの方は、その方法が家族全員で共有できているか、全員が片付けやすい場所なのかを一度考えてみましょう。
戻しやすい場所、戻しにくい理由を話し合ってベストポジションを探していくと、片付けで生じるストレスも減らせますよ。
気持ちよく片付いたおうち作りの参考にしてくださいね。