掃除のプロがこだわる、自分だけの掃除道具。
どんなプロにも、仕事に欠かせない「七つ道具」があります。
掃除と収納のプロ、大津たまみ先生ももちろん、掃除に欠かせない「七つ道具」をお持ちです。
ですが、その中にちょっと意外なモノがあります。
それは…「刷毛(はけ)」

そう。ペンキやニスを塗る、ホームセンター等でワンコインで買える、あの刷毛です。
「刷毛はハウスクリーニングを行う私たちにとってはなくてはならない道具です。いろんな場所の掃除に使えて、とにかく使い勝手がいいんです!マイ刷毛を見つけるために、ホームセンターを何軒もはしごすることもあります!」と熱弁する大津先生。
別の掃除のプロは「自分にとってベストの刷毛を売っているホームセンターをいくつかマークしてあって、立ち寄る時はストックがあるかチェックしています」とのこと。
掃除のプロがそこまで刷毛にこだるのはなぜなんでしょう?
ワンコインで手に入る刷毛がそんなに便利なら、私たちにも使えるのではないでしょうか?
掃除のプロをトリコにする刷毛の魅力を教わりました。
どんな汚れにも強いから。刷毛が愛されるにはワケがあった。
掃除のプロが刷毛を愛してやまない理由。
それは1本でタイプの違う汚れを落とせるからです。
大津先生によると「刷毛はホコリやチリなどの乾いた汚れを集める時も、油汚れなどのしつこい汚れを落とす時も、両方に使えるからとっても使い勝手がいいんです」とのこと。
実際に使い方を見せてもらいました。
プロの刷毛ワザ1:チリやホコリなどの乾いた汚れに。
棚の中や上、巾木(はばき)の上などにたまるホコリやチリ。
これらを掃除のプロは「乾いた汚れ」と呼びます。
ほうきや掃除機では取りきれないこの乾いた汚れに、刷毛が最適なんだそうです。

例えば棚の中。
小さなほうきとして、このようにスミまでしっかり掃いてゴミを集めることができます。
ホコリは濡れ雑巾で拭きたくなりますが、それでは濡れたホコリが棚にへばりつくだけ。
乾いた汚れは乾いた状態で取るのが掃除の鉄則。
利き手に刷毛、もう一方の手にハンディークリーナーを持って、乾いた状態で汚れを集めて吸い取ります。

窓のサッシの溝にたまったホコリも刷毛ならラクに集められます。

換気扇のフィルターにたまったホコリも、刷毛で掃き出しながらハンディクリーナーで吸い取れば、ホコリを舞い上がらせることなくキレイに落とせます。
水で洗うより手間がかかりません。
プロの刷毛ワザ2:こびりつき・油などのベタついた汚れに。
キッチンにできるこびりつきやベタついた汚れ。
濡れ雑巾や洗剤で拭くだけでは落ちにくいものも多いです。
そんな時に活躍するのも刷毛です。

例えば、コンロと調理台の間にこびりついている、ベトついた汚れ。
スポンジや歯ブラシだけでは落ちにくい汚れです。
これを効率的に落とすために刷毛を使って洗剤をムラなく塗りこむのです。
特に泡タイプの洗剤との相性が良いので、汚れに泡を吹き付け、刷毛の先で奥までしっかり洗剤を押しこんでいきます。
大津先生は力説します。
「私たちは洗剤の塗りムラが許せないんです!
刷毛ならこの塗りムラができず、汚れにしっかり洗剤を乗せることができて、早く、キッチリ汚れを落とすことができます!」
大津先生のお話を聞きながら、確かにムラなく手早くペンキやニスを塗る動きと、洗剤を塗るこむ動きは似ている、と納得。
他にも刷毛は次のような場所の汚れに便利だそうです。
刷毛での掃除が効果的な場所
- レンジフードなど、広い面についたベタついた汚れ
- 溝にたまってスポンジやブラシでは落とせない汚れ
- 魚焼きグリルの内部や部品など、洗剤を塗りづらい場所についた汚れ
洗剤を塗り伸ばした後は15分ほど放置して汚れを浮かせ、刷毛でこすり落としていきます。

刷毛では落とせない汚れはブラシで落とします。
おススメは、先端がJの形に曲がった通称「Jブラシ」(写真は「大津式お掃除ブラシJ」)。
頑固なこびりつきもしっかりかき出すブラシも、掃除のプロの「七つ道具」のひとつです。
掃除のプロに教わるベストな刷毛の選び方。
ひと口に刷毛と言ってもさまざま。
ホームセンター等に行くと棚にずらりと刷毛が並んでいます。
その中で、掃除道具として使いやすい刷毛の選び方を教わりました。
掃除のプロの「刷毛」の選び方
- 毛の量が多く密度が高いもの
- 毛が長いもの
- 毛に弾力性があるもの
- 柄がプラスチック、もしくは撥水加工がされた木のもの

もっとも大事なのは、毛の密度なのだそうです。
「汚れを掃き集めたり、洗剤を均一に塗るためには毛の密度がしっかりしていることが譲れません!
毛が少ない刷毛、ハゲた刷毛ではダメです!」と大津先生、ここでも力説。

さらに、汚れを集めたり洗剤を塗ったりするためにはある程度毛が長く、弾力性があることも大事だそうです。
汚れに合った刷毛の素材を選びましょう。
汚れによって適した刷毛の素材が異なるそうです。

右側が動物の毛(ブタや馬等)でできた刷毛。
ホコリなどの乾いた汚れに適しています。
左側はナイロン等の化学繊維でできた刷毛。
洗剤を塗る等、濡れる作業に強く、しつこい汚れを落とすのに最適です。
柄が斜めになっているとより掃除がしやすいそうです。
刷毛を使った後のお手入れは?

掃除が終わった後は掃除道具の汚れも落とすのが掃除のプロの鉄則。
特に洗剤を塗ったりベトついた汚れを落とした刷毛は中性洗剤をつけてもみ洗いをし、お湯ですすぐと早くキレイになります。
身近な刷毛、使ってみませんか。
ワンコイン程で手軽に手に入る刷毛。
大津先生は、自分が一番使いやすい刷毛に出会うために、ホームセンターで座り込んで、柄の使いやすさを確かめる「刷毛のテイスティング」を何本も行うそうです。
こんなに身近な物が実は掃除にはなくてはならないものだったなんて、意外ではありませんか?
プロが絶大な信頼を寄せる「刷毛」。
みなさんも一度試してみませんか?

出典:写真AC