ニット・セーターのお手入れについて。洗濯方法と長く楽しむためのプロのコツ。

お気に入りのニット・セーターを長く着るために。

お気に入りのニット・セーターを長く着るために。

出典:写真AC

ウールのセーターやニット地の服は冬のおしゃれの主役。

お気に入りの物ほど、お手入れや洗濯に気をつけて長く楽しみたいですよね。

ご自宅ではどんなお手入れをされていますか?どれくらいの頻度で洗濯をされていますか?


「そもそもウールのセーターはそんなに洗わなくて良いんですよ」と言うのは、デパートの紳士服売り場に長年勤務した経験を持つお掃除と片付けのプロ、川下章子(かわした あきこ)先生。

洗いすぎはニットの風合いを損ねることにもなるので、先生は大事にしたいセーターほど家では洗わないのだそうです。

「ニット、セーターは日々の簡単なお手入れで長持ちします。」と言う服のプロに、プロだから知っている日々のお手入れ方法、洗濯や収納のコツを教わります。



「ニット」って? 


ニットとは生地の名称。一本の糸を編んだ物で伸縮性と弾力があります。

セーターに限らず、マフラー、手袋、Tシャツ、スウェット、ジャージ、肌着等もニットの物があります。

縦糸と横糸で織った布製品とは違い、引っかかりやすく糸切れや毛羽立ちやすいのも特徴です。

ニット・セーターの日常のお手入れ方法。

 

まずは日常のお手入れ方法をご紹介します。

子供服や1~2シーズンだけ集中して楽しむ物はともかく、長く楽しみたいお気に入りの物ほど着た後のお手入れが大切です。

 

ニットの天敵は湿気と摩擦。

 

特にセーター等のアウター類には、外出時のホコリや汚れ、汗による湿気が付着しています。

そのままクローゼットに戻してしまうと虫食いやカビの原因になり、衣類を痛める恐れがあります。

着た後にちゃんと汚れを取り除くことがニットを長持ちさせるコツです。



お手入れ① 湿気を取る。

帰宅後は直ぐにクローゼットに戻さず、日陰や風通しが良いところに吊るしたり置いたりして湿気(汗)を取ります。


マフラーやストールのような口元近くで使う小物も、帰宅後にしっかり湿気を飛ばしましょう。

マフラー等は折って使い、使用後に広げて湿気を取ります。次に使う時に別の場所を折って摩擦を避けるようにすると長く楽しめるそうです。


お手入れ②ブラッシングをする。

一度着用したニットはブラッシングをします。

洋服ブラシを使い、表面についたホコリや花粉等を優しく払い落とします。

ブラッシングには毛を整え、毛玉を防ぐ効果もあります。行うことでニットの風合いを長く保てます。


衣類の汚れの大部分は皮脂汚れ。

アウター類は肌に直接触れる機会が少ないので、実際はそんなに汚れていません。

洗濯よりも、外側に付着した汚れを落とすブラッシングの方がお手入れには適しているのです。

「洋服ブラシはハードルが高いと思われがちですが、一本でとても簡単に汚れが落とせるので、ぜひ取り入れてみてください。」と川下先生。


様々なブラシがありますが、川下先生のおすすめは天然の馬毛のブラシ。

天然毛は静電気も防いでくれます。


まずは売り場に行き、自分が持ちやすい、使いやすい形の物を選んでみましょう。使いやすいブラシを選べば、ブラッシングの習慣も自然に身につきますよ、と川下先生はアドバイス。


ニオイが付いてしまった時のお手入れ方法


アウター類にニオイが付いてしまったら、まずはブラッシングをしてみましょう。


洗濯表示を見て洗濯やクリーニングが可能なら、アイロンの高温スチームを当てるのも効果があります。

目立たない場所で試してから行い、しまう前にはしっかり乾燥させましょう。


市販の消臭スプレーを使用する場合は、ラベルに書かれた使用方法や注意事項をよく読んでから使いましょう。


 

毛玉ができてしまった時のお手入れ方法


ニットにつきものなのが毛玉(ピリング)です。

毛玉は繊維が摩擦によって切れ、絡み合ってできる物。セーターだけでなく、Tシャツやジャージの脇、腰、カバンやベルトや上着等で擦れた場所にもできます。

毛玉は引きちぎるとかえって毛羽立ちが目立ってしまいます。

専用の毛玉取りやハサミ、安全カミソリを使い、生地を傷めないよう、毛玉だけをそっと取り除きます。

ただ、生地はカットした糸の分だけ薄くなっていきます。


衣類の傷みや汚れは太陽の光で確認するとわかりやすいので、こまめにチェックをしましょう。

ニット・セーターの洗濯方法


セーターやジャケットのようなアウター類は、何回か着て「ちょっとボリュームが減ってきたな」「汚れがついたかな」と思った時が洗濯のタイミング。


購入時には店頭でも洗濯方法を確認し、洗濯表示に従った洗濯をしましょう。



手洗いをする場合

①洗う物を裏返してたたみ、目の細かいネットに1枚だけ入れます。

ネットの中での摩擦を避けるためです。

②バケツ、洗面台、浴槽等、洗う物のサイズに合った場所に水をいれ、おしゃれ着洗い用の中性洗剤を溶かし、優しく押し洗いをします。

ぎゅっぎゅっと押さず、あくまでふわっと、水の中で泳がせるように動かす程度です。


川下先生は使う洗剤の量は表示よりやや少なめにして、洗剤残りや摩擦を避けているそうです。

節水にもなります。

③何度も水を替え、しっかりとすすぎます。

④すすぎ終わったら、ネットに入れたままタオルで包み、優しくたたいて水気を取ります。

洗濯機の乾燥機能を使う場合は、脱水のしすぎでシワにならないよう注意してください。

⑤干す時は日陰に広げます。

直射日光による日焼けを避けるためです。

ハンガーに干すと、伸びて型崩れすることがあるのでなるべく避けましょう。


洗濯機で洗う場合

洗濯機で洗う場合は、衣類についている洗濯表示に従います。


手洗いの時と同様、裏返してたたんだ衣類をネットに入れます。

おしゃれ着洗いコースやドライコース等の水流が弱いモードで、指示通りの洗剤量で洗います。

洗い終わったら日陰に広げて干します。



どちらの洗い方でも、柔軟剤を使う時は分量を守りましょう。


洗濯機で洗う場合

出典:写真AC

洗濯ができないニットは


家庭で洗濯ができないニットは、着用後に陰干しで湿気を取り、ブラッシングをします。

ハンガーに吊るし、不織布や布等の湿気をためないカバーをかけ、ホコリから守ります。


洗濯が必要な時はクリーニング店に持ち込み、プロの技術に頼りましょう。


川下先生はお気に入りの服の順に、「クリーニング店に依頼」→「手洗い」→「洗濯機洗い」と洗濯方法を変えているそうです。

ニットを守る収納方法

ニットは伸縮性があるため、一般的なハンガーにかけると重みで伸び、変形する恐れがあります。

滑りにくいハンガーを使うと形崩れがしにくくなります。

たたんで収納する場合は、摩擦を避けるためにぎゅうぎゅうに詰め込まず、ゆとりをもって立てて収納します。


積み重ねると重みで下の衣類の風合いが変わる可能性があるので、立てる収納がおすすめです。

手をかけることも楽しみにできたら

お手入れと扱い方でニットの寿命は長くなります。

まずは、着た後に湿気を飛ばし、ブラッシングすることから始めてみませんか。


また、毎日着用せず、休ませながら着るのも大切なポイントです。


「ていねいに扱っていても毛玉ができたら、十分におしゃれを楽しんだ証拠です」と川下先生は言います。

長く楽しんだニットを、“ありがとう“と手放すタイミングだそうです。

お気に入りのニットを丁寧に扱うことで、暮らしが快適で素敵に感じられたり、自分が好きになっていきます。

おしゃれと共に、お気に入りに手をかけることも楽しんでみませんか。

手をかけることも楽しみにできたら

出典:写真AC