災害時の備え。非常食や備蓄品の保存方法を片付けのプロと考える。

年に一度、災害時の備えを見直す日を

年に一度、災害時の備えを見直す日を

出典:写真AC

阪神・淡路大震災が発生した1月17日、東日本大震災が発生した3月11日、9月1日の防災の日を始め、被害が大きかった災害の日が近づくと防災への意識が高まります。

これらの日を備蓄品や持ち出し品を見直す日にしてみませんか。

 

家庭内で気になるのは食料等の備蓄品。何をどれだけ準備し、どう管理するか、不安な方も多いようです。

物の管理と言えば、片付けのプロの得意分野。

神戸市在住の掃除と片付けのプロ、青山恵奈(あおやま えな)先生に教わります。

青山先生は阪神・淡路大震災を体験。幸いにも被害は少なくて済みましたが、それ以来防災に対する意識が体に染みついたそうです。

日頃から「ストレスフリーに生きる」をモットーにしている青山先生は、災害時にかかるストレスもできるだけ減らすことを考えて対策をしています。

また、災害は日常生活の中で突然起こるもの。特別な“非日常”ではなく、暮らしの中で起こるものとして備えるのが大切では、と考えます。

 

青山先生が自宅で行っている災害対策、備蓄品のローリングストックの方法、収納のコツ等を見せていただきました。

非常食や備蓄品の準備と管理の方法


何を用意する?

青山先生は、普段の食品や日用品を少し多めに用意して、使った分を補充しながら備蓄を続ける「ローリングストック」を実践しています。

 

ポイントは、普段から食べ慣れていておいしいと思う物、使いやすい物を少し多めにストックすること。

 

特に食料は、非常時にいつもの味、食べたい、おいしいと思える物があることで安心感や小さな幸せに繋がります。

周囲の人とのコミュニケーションにもなります。

一方で、どんなに有名でも栄養価が高くても、自分がおいしいと思えない物を非常時に食べ続けることにはストレスを感じ、できるだけ避けたいと思うそう。

 

日頃から「これを非常時に食べたいか」と考えながら買い物をしたり試食したりして、ラインアップを更新しているそうです。


備蓄品の量はどれくらい?

青山家では3日分くらいの家族の食事をまかなえる量を備えています。

ちょうど食器棚の引き出し一杯に収まるくらいの量です。

 

もちろん家族構成によって異なりますが、大人2人暮らしの青山家ではだいたい3日分が適切と判断し、備えているそう。

 

政府が推奨するローリングストックでも3日、できれば1週間分が望ましいと言われています。

ただし水だけは別です。

飲料用だけでなく、断水した際の生活用水にすることも考え、ウォーターサーバーのボトル等、食料よりも多めにストックしています。

備蓄する品物や量については自治体のサイトにも掲載されています。

東京都防災ホームページの「東京備蓄ナビ」等を参考にしてみてください。



期限切れを防ぐための管理・収納方法

 

備蓄の食料の期限が気付いたら切れていた、管理が難しいという声もあります。

青山先生は、賞味期限や消費期限を上に向けて並べ、すぐに目に入るようにしています。

日付が見えにくい物や説明書きに紛れている物は、マジックで分かりやすく印を付けたり、大きく書き直しています。

 

同じ食材は手前に期限が近い物、奥に遠い物になるように並べ、買ってきたら日付を確認して順に並べます。

食べる時は手前の期限が近い物から取ります。

備蓄品は食品と調味料に分け、キッチン内の引き出し2か所に収納しています。

 

こちらは調味料入れ。

使っている物がなくなったらここから出し、普段の買い物で買い足します。

 

どちらもスペースからあふれそうになったら普段の食事に積極的に取り入れたり、寄付したり、買うのを控えたりして調整します。


一度に大量の食品を買うのは金銭面も体力面も収納面でも負担が大きいですが、1個ずつ揃えるのならそれほど負担は大きくなりませんよね。

いつも食べている物を備蓄品にすることで、日常生活の中で使う機会が増え、期限切れや買い足し忘れが防げます。

いつも使う場所に収納することは、いつもの場所にいつもの物があるということ。

日常生活の延長にすることで、非常時でも慌てず、生活や心を落ち着かせてくれるはずと備えています。

 

これが青山先生流のローリングストックのコツです。

災害に備える収納のコツ

阪神・淡路大震災の被災経験のある知人から「物は落ちるんじゃなくて飛ぶ」という証言を聞いた青山先生は、収納面でも災害時を意識するようになりました。


こちらは日用品のストック庫。

重い物は必ず目線より下、軽い物は上に配置することを徹底しています。

重いペットボトル飲料は最下段に置いてあります。


この収納方法は片付けの鉄則でもあります。

日用品のストックにはファイルボックスを多く使っていますが、災害時に飛び出さず、日常生活ではストレスなく取り出せるよう、底に市販のすべり止めやシリコン製のクッションゴムを貼っています。

日常生活でも転倒や落下の防止になります。

非常用持ち出し袋も見直しましょう

非常用持ち出し袋も定期的にチェックが必要です。


青山家の持ち出し袋は靴箱の最下段に懐中電灯と一緒に入れてあり、すぐに持ち出せるようになっています。

持ちやすさや盗難防止の観点から、袋を黒のリュックに変更。しっかり背負えるタイプのものにしました。

市販の持ち出し袋をカスタマイズされている方も多いと思いますが、何を持ち出すかは日常生活の延長で考えるとわかりやすいそう。

まず、日頃数時間外出する時の必需品は何かを考えます。いつも持ち歩いている薬、ハンカチ、携帯、バッテリー…。

その外出が長時間になったら、1泊2日になったら、と時間を延ばして考え、揃えていきます。

持ち出し袋に入れたら実際に持ち運べるかもチェックしておきましょう。


中身の確認は、年に一回日を決めたり、普段使っている薬が切れかけたら確認するようにして、日常生活の中で、中身と自分をアップデートするようにしているそうです。


少しでも安心して、心地よく過ごせるように


片付けのプロが実践している災害への備え、参考になることが多かったのでないでしょうか。

青山先生は、自分はどんな避難生活を送りたいかを考えて備え始めた結果、準備がしやすくなり、今ではローリングストックも無意識に行えるようになったそうです。


被災時には想定外のストレスがかかります。

日常の延長と想定して備えておくことで、ストレスが緩和され、余裕が生まれ、他のストレスや非常事態の対処に力を割けるようになります。災害を自分のこととして感じられるようにもなります。


「日常の延長で考える」、「非常時のストレスを減らす」、これらを意識しながら準備を始めてみるのはいかがでしょうか。

少しでも安心して、心地よく過ごせるように

出典:写真AC